宮澤賢治『雁の童子』ーその2

今回、ココペリスタッフの尾川知さんが賢治の似顔絵を描いてくださいました。

 

読書家の尾川さんは折り紙作家でもあって、様々な分野でその才能を発揮されています。

今回の一枚に込めた思いなどについて、このようなお言葉をいただいています。

 

宮沢賢治の容貌を視覚的に伝える資料は少ない。人口に膾炙しているのは、1924年に撮られたという椅子に腰掛けて手と脚を組んでいる写真と、山高帽にコート姿でうつむいて田の中を歩いている写真(このポーズはベートーベンを意識したものという)の二点だろう。どちらもいかにもカメラを意識していて、賢治そのひとの「らしさ」は前面に表れていないように感じられた。
この作品では腰掛けている写真を元にしながらちがう角度からの顔を想像で描き、立ち姿、学生服というそれぞれ別の写真での見た目を勝手に切り貼りして作者の個人的なイメージを表現した。頭上に吹く風は『風の又三郎』から借りて来た。
作者の決めつけや思い込みに由来した表現であっても鑑賞する者とのピントが合えば成立する。ただし呼応してくれるひとがいないと一人よがりになってしまう。この距離感が似顔絵というゲームの妙味である。

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