もんでん奈津代さんインタビュー 〜賢治作品の英訳にあたって〜 その1

ココペリ121学術・文化部門では、ケア塾茶山読書会で取り上げられた宮澤賢治の短編を英訳する試みを始めています。

訳者のもんでん奈津代さんは在野の南太平洋生活研究家であり、ここ15年ほどは南太平洋の島国ツバルと日本の間を行ったり来たりしながら、ツバル語と英語の教師や通訳、翻訳等のお仕事をされています。ココペリ121とご縁があって、今回の日本滞在中に宮澤賢治の短編の英訳をしていただけることになりました!

もんでんさんに、賢治作品を英訳するにあたっての思いなどをお聞きしました。全3回の連載でお届けします。

 

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宮澤賢治は、ますむらひろしさんが漫画化した作品の映画『銀河鉄道の夜』を10代の頃に何度も観ました。私自身が「人に溶け込めない」と感じている部分に、とても響きました。

銀河鉄道の夜』のジョバンニは、他の豊かな子どもたちと違って、いつも一人でいる。孤独だからこそ広がってくる世界、というところから、物語が始まっている。

私は感受性が鋭すぎるところがあるらしく、社会の中で人と交流するよりも山に入ってじっと木と語らうときが、より自分らしい時間のように感じられていました。私のそんな部分と共鳴する賢治の詩集や童話に、どんどん親しんでゆきました。『春と修羅』序の初段を覚えて、山で声に出してつぶやくと、時間や次元を超えた透明なところまで自然とひとつになれる感じがしました。

私が賢治にひたるのは、人から離れ、自分の内面に深く入り込んでいる時が多かったです。それは、英語や外国語が大好きで多様な国の人々との会話を楽しんでいるときの自分とは、違う自分の部分です。

 

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英語を勉強し始めたのは、中学の時にエチオピアの飢餓が深刻であることを知り、その救援活動に身を投じたいと思ったのが発端でした。「外に向かって何かしよう」という自分が英語と結びついていました。「国連に入ろう」と思って勉強してました。けれどその後「絵を描こう、内面を追求しよう」という方向へ転向して、英語の勉強からやや離れました。そして日本の広告代理店という英語を使わない仕事に就いたのですが、南米の楽器サンポーニャの世界に魅了され、「楽器の練習を長時間しながら効率よく働けるのは、英語教師だ」と思いついて、再び英語を勉強しながら教え始めたのでした。英語の勉強を再開するにあたって語学交流の貼り紙を出したりして、カナダやアメリカ出身の友だちが増えてきました。それが25歳ぐらいの頃です。それまで英語を話す人とうんと親しくなることがなかったけど、仲良く付き合う人がだんだん増えてきて、英語が楽しくなってきました。

 

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「その2」に続きます。