2020年9月12日『えんとこの歌』自主上映会 @京都教育文化センター(後編)

久保田テツさんによるアフター・トーク & 立岩先生トーク

 

ドキュメンタリー映画『こうたにまさあき』、『只いるだけで意味はある ~甲開日記「ALSな日々」』、『眼の言葉』上映終了後)

 

司会:みなさま、おつかれさまでした。ここで、この3篇の製作者である久保田テツさんよりお言葉をいただきたいと思います。 

 

 (会場拍手) 

 

久保田:あの、長見さんからは「一緒にしゃべろう」みたいな感じだったので気軽に来たですけど、まさか真ん中にマイクが来て、「お言葉を」みたいなことになるとは思ってなくて(笑)。すみません、特に言葉っていうのはないですけど。 

えーと、みなさん、すみません、ちょっと、何せ僕は小ちゃいビデオカメラを入手して初めての映像というのが先ほどの中水さんの映像で、編集とかもそんなに実は上手じゃなく。それこそ『えんとこ』を観た後での映像になるので、ちょっといろいろと見苦しかったり、音声がちゃんと聞こえなかったりしたところもあると思いますが。 

 

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そもそも僕がALSを記録したいなと思ったのが、自分が1995年の震災の年に、ギラン・バレー・シンドロームっていう病気にかかって。しかもちょっと重めの症状だったので、1年近く寝たきりだったですね。で半年ぐらいICUにずっと入れられて、という状況の中で、ほんとに体が動かない。指がちょっと動くぐらいで、「足の力は強いね」って言われたですけど。そんな状況の中で、自分が病院の中をずっと暮らしたっていう経験があって、そのときに強烈なエピソードが、自分の中で強烈な印象があった出来事があったですけど。 

ICUから出て、共同の病室に入れられたときに、隣に全盲のもりさんいう、すごい気さくなおじさんが隣のベッドに来たですね。いかんせん僕はもうここに気管切開して、人工呼吸器を入れてるので、声が出ないですよ。で、隣の気さくな全盲のもりさんは、しきりに僕の気配を感じてしゃべりかけてくるですけど、僕が全然返せないです、言葉で。でそうすると、もりさんもなんとなく異変が怖くなって。全盲の方って、もうとにかく、ね、気さくにしゃべりかけてくれるので、で、一切それを無視している状況になって、もりさんもなんそわそわ、どきどき、ちょっと悲しげな、「どうしたですか?」みたいなことを僕にどんどんしゃべってくるっていう。そもそも、「全盲の方と気管切開してる人間を隣にするなよ」って、今になったら思うですけど。そういう状況になった時に、もう一切コミュニケーションが取れないって状況になって。

でその時に一つ発明をして、全盲のもりさんの前に点字で50音を並べて、で僕がもりさんの指を持って、僕が言いたいことを言うとか、もりさんの問いに返事をするっていうことをやってたんですね。で、もりさん、もうずっと点字には慣れていらっしゃる方だったですけれど、そう、僕が慌ててこう指を動かすと、「ちょっと待って」「ちょっとわかんない」みたいなことで、いっぱいイライラもされっていう。だからその医療現場における、ちょっと特殊な状況でのコミュニケーションっていうのをそのときに体験して、すごくそれが95年の震災の年だったですけど。 

で、それから2005年に大阪大学で、それこそ今日、鷲田さんいらっしゃいますけども、あの鷲田さんが作られたコミュニケーションデザイン・センターという、いろんな領域の人たちが集まって、それこそ専門家も学生も交えて、コミュニケーションについて考えようっていうことで。で、今日名前がよく出ていた西川勝さんっていうケアの方と、甲谷さんは、何ですね、志賀さんっていう身体のコミュニケーションをずっと考えられてる方と、2005年に大学で出会って。で僕は映像というメディアで、いろんな現場を記録したという断片を、今日みなさんに3本観ていただいたという次第です。 

えーと、はい、簡単にプロセスだけでしたが。おもしろかったのが『えんとこ』に出てたみなさんとやっぱすごく、語られてた言葉がすごく、なんか近かったりとか、印象に残っているのは、甲谷さんのケアをされてたヘルパーの方が、「自分を正してくれる」っていう言い方をされていたのが、まさに『えんとこ』でもやっぱり同じような言い方をされていて。なんていうか、ケアする者とされる者っていうものの、こう、なんていうかな、すごく「交錯した共同体」っていう言葉も出てましたけど、なんかそういう現場が改めて、今日、自分撮ったものと『えんとこ』の作品を観て、見比べてもやっぱりそう思いましたし。自分の経験としても、なんか改めて自分が学んだことと、そして相手にたぶん僕も何かしら気付かせたこと。それこそその指の50音を発明させたっていう(笑)。それ、僕がもりさんにこう、「お願いお願」って言って作ってもらったですけど。なんかそういう関係性が今日、ずっと時間を通して観れてよかったなと思いました。以上です。ありがとうございました。 

 

 (会場拍手) 

 

司会:久保田テツさん、ありがとうございました。

最後に、社会学者で、ココペリ121の代表の長見さんの友人でもあられる、立岩真也先生に締めの言葉をいただきたいと思います。いらっしゃいますか? 

 

立岩:みなさん、こんにちは。立岩です。先月帽子を買ってですね、なんかちょっと嬉しいので、帽子なんか要らないんですけど、ほんとは。今日は帽子を被って来てみました。ただそれだけです。 

で、締めの言葉って言うんですけど、締まりようもないわけで。だいたい僕、この企画があるっていう話は前聞いて。で、関係者にチラシはもらったんですけど、今日あるっていう自覚もなかったし、僕、しゃべることを求められてるってことも今日の朝までわかってなくて。長見さんからメールが来て、サボろうかなと思ったんですけど。京都は便利だよね。川沿いをちゃちゃっと走ってくれば着いてしまうので、断れないというか、着いてしまったので、ここにいます。 

で、何もしゃべることは実はないんですけど。だけど久しぶりっていうか、「あ、甲谷さん若い!」みたいなね。2006年ですか? だからもう14年前の画像っていうのがあって、そして数年前の画像っていうのがあって。 

 

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僕は字を書く人で、字は字で大切だと思ってるんです。ですからこういう仕事をしてるんですけれども。ただやっぱり、まあ当たり前、超当たり前なことですけど、両方要るな、っていうふうにいつも思っていて。今、こういう動画もそうですけれど、写真も含めて、なんか絵っていうか、やっぱそういうものを集めたり残したりっていうことも始めてはいるんだけれども。まあもともと字の人なものだからっていうこともあって、私どもの生存学研究所っていうのを今やっているんですが、そこのサイトは字ばっかりの、なんか退屈っていうか無味乾燥っていうか、そういうものなんですけれども。でも、そういうのも要るんですよ、実はね。

何が要るかっていうと、2006年ってどういう年だったかな?って思うんです。僕は、実は京都来たのは2002年なんですけど、まあその頃ですかね、甲谷さんが発症されたのは。それからいろいろあって、2006年、2007年ぐらいに京都市と交渉をして、最初上手くいかなくて、2008年の1月に、みんなで団体で、京都市の市役所に出かけていって。で「要るんです。介助も制度も要るんです」って言って聞いてもらって、それでなんとかなった、とりあえずね。それで、そういう制度を使って、本業じゃないんだけれども、でも本業なのかな、よくわかんないんですけどね。そういう感じで、一方で別のことしながらこういう仕事もする。でまあ稼ぐこともできるという仕掛けができていった、ちょうどちょっと前ぐらいの出来事だったんだなっていうのは、これはそうやって字を残して記録して、わかるっていうか思い出せることでもあって、両方必要だなと思いました。 

でも2006年の甲谷さん、「あ、こんな感じだったっけ」って。若いよね。ていうか、僕はたぶん、その時の甲谷さん48ぐらいで、そのあとひと回り時間…、僕はそれにひと回りも年が経ってしまったので、ずっとそのときの甲谷さんより年上なわけで。「あ、若い甲谷さんだな」とか。あと2016年ぐらいですか、あれは? 僕は甲谷さんとは時々ちらっと出会うんだけれども、でもこう正面、真上からこう撮って、体がこうガリガリなったっての、手がこうなってああなってみたいな、それから「ああそっか、結構表情あるな」とか、そういうのって僕は恥ずかしいんでしょうかね、まあ時々会うんだけど、あんまりわかってなくて。「あ、けっこう動き激しいな」みたいな。それが10年経った甲谷さん、とか、そういうことがわかって。おもしろいっていう…、まあ僕はしょっちゅう「おもしろい、おもしろい」って言ってまわってるんですけど、おもしろいなっていうことも思いました。 

で、そのつまんないほうの話をします。これ、ぱっと見ても全然、何も見えないと思うんですけれども、これはALS京都っていう、ALSの人たちが京都でどういうふうに暮らしてきたのかということを、まあやっぱり主には文字ですね。こちらに今、増田さんがいらっしゃって、甲谷さんもいらっしゃるんですけれども、あと何人かの方々、人々が、まあどういういきさつで生きてきたか。それからそういう人に、どういうふうに、どういう人が関わってきたのかっていうことをインタビューして、例えばこのわけのわかんない企画を、企画を企画した長見さんに、去年かな? 僕がインタビューをして、一昨年か? 確か僕がインタビューをして、そのインタビューの記録が全部あったりします。それから、甲谷さんは、最初はバイト仲間みたいなこともあったかな? それから彼らの体を診てあげてたってことで。体、表現みたいなことを仕事、活動している人たちとの付き合いが長かった。それで、今でもそういう流れの人たちが、甲谷さんに関わっているんだけれども、そのうちの一人が由良部さん。あの、踊り手です、ダンサーですよね。で由良部さんにインタビューしたりとか。そういうものを、そうすると、インタビューだと2時間ぐらいかかるから、その2時間のインタビューを文字にしてっていう、地道なことをやっています。でも大切なことだとも思っているので、こういう映像と、文字と、なんかそういういろんなことを足し合わせて、ようやく何かが伝わったり、覚えてられたりすると思うんで。僕らも、僕らは僕らでがんばってやっていきたいと思いますので、よろしくっていうことです。 

ちなみにですね、もう1個言って、宣伝をして。僕はたいがい宣伝しかしない人間なんですけど。えっと今日サボっちゃおっかなと思ったのも、実は来週、あ、今日月曜、じゃない土曜日だから、ちょうど1週間後ですね、19日の土曜日に障害学会っていう学会が、小っちゃい学会があって。それの大会、っつっても今年はコロナになってリアル会議ができなくて、オンラインでやります。で、それの準備を毎日、準備っていうかな、やってるんですけれども、それも今回はホームページとメールのやり取りプラス、シンポジウム1個っていう、そういうオンラインでやるって感じです。それはですね、えっとALSとちょっと似てるけどだいぶ違う、だいぶ似てるけどだいぶ違う、よくわかんないですけれども、筋ジストロフィーっていう障害のとこは聞いたことがあると思うんです。ASLの人より若い発症の人が多いですよね。小学校上がるぐらい、上がる前ぐらいに発症して、昔はほんとに二十歳になれなかったっていう人多かった障害、疾病ですけれども、今はそんなことはない。40、50って人はいます。

そういう人たちが、うーん、ALSの人たちはそうだなあ、だいたい会社勤めであるとか、なんか仕事して、50、60で罹って、「さあ、どうしようか」みたいなことになって、以後いろいろっていう感じですけど。筋ジストロフィーの人は、まあ小学校上がる前くらいに発症して、それで、まあ今はまたちょっと違いますけれども、一昔前は、国立療養所っていう各地にある、まあ病院ですね、かつては結核の人が収容された施設ですけれども、そういうところに、まあ収容っていうか入所っていうか入院っていうかして。それで長い人だと30年とか40年とか暮らしてきて、まあたいがいその間に亡くなってしまってきたんですけれども、さっきも言ったように、生きられる人も出てきた。っていう中で、「そんな30年も40年も病院居たくない」って、そりゃ思うんじゃないですか。てなことがあってですね、そういう人たちが地域で、甲谷さんみたいにっていうか、暮らせるようにっていうことで、いろんな企画っていうか活動が始まってるんですよ。 

で、僕も少しそれに関わっていて。それは実は、いろんな偶然的な事情もあって、京都から、それから兵庫、西宮とかですね、そういう関西発のムーブメントで、それで今、全国に広がってやってます。結構僕はおもしろいと思ってるんですけれども、なんかせっかくなら、おもしろいことしようって思って、それを来週の今日、今日というか土曜日、午後にオンラインでやります。で、参加費の取りようがないので、もう誰でも入ってくださいって言う感じで、ズーム(zoom)使ってやると思いますので、お知らせします。何て検索したらいいかな? 僕は「立岩真也」と言いますけれども、それでもいいですし、「生存学研究所」ってのでもいいですし、「障害学会」ってのでもいいです。とにかく何かで検索してもらう。そうじゃなければ僕にメールをください。そうすれば、来週のちょうどこの時間、よりちょっと早い時間かな? ALSではない、なんて言ったらいい…、まあ、でもちょっと似てるとこもある筋ジストロフィーの人たちが、どうやって暮らし変えようとしてるのかっていうこと、それを学者なら学者が、ジャーナリストならジャーナリストが、そして介助したり、京都市内でいろんな運動・活動している仲間たちが、どういうふうにそれを支えたり進めたりしようとしてるのかっていうことを、僕が聞き手に回って話を聞こうと思っているので、どうぞ見にきてください。 

という、締めでも何でもなくて、宣伝です、と。そんなふうにして、ときどき僕は長見さんのイベントで…、この人もほんっと、わけわかんない。コロナがいよいよ真っ盛りになる直前ですね、にアバンギルドって言ったっけ? なんかライブハウスっていうか、みたいなところで、ハングルと、ALSと、なんかよくわかんない(笑)、そういうイベントをやって、その後いよいよ、そういうところでライブができなくなって、まあ半年くらい過ぎたんですけれども。そんなとき、ま、そのとき2月終りだったんかな? 僕も行ったんだけれども。まあ京都、けっこう意外とおもしろいと思うのね。ここ10年ぐらい、もっとかもしれないですけれども、いろんなことが起こっていて。なんだろ、あんまりない、けど時々ある、みたいなね。だからその福祉福祉した人たちだけじゃなくて、医療っていうだけじゃなくて、アートであったり、まあものを書く人であったり、そういう人が混ざったり集まったりしてっていうことが、ぽつぽつと起こっていて。さっき紹介した筋ジストロフィーに関する企画も、ちょっとそういうとこあるんですよ。ですから、けっこう面白いことが近所で起こっている、自分もそれに関わってる、関われるっていう感じで、こういう企画もね、そういうきっかけっていうか。あるいはすでに、そういうものに染まっている人たちにとってみれば、それを確認し。でまた知り合えた人と久しぶりに会ったりって、そういう機会だと思っていますけど。 

えーと、まあ半分宣伝でした。どうも。さっき来たばっかりなんで、今日何があったか実はよくわかっていません。なので、たぶん閉会の何とかみたいなことは、長見さんか誰かがやるんだと思いますから、僕はこれで終わりにします。どうもありがとうございました。 

 

 (会場拍手) 

 

司会:立岩先生ありがとうございました。

 

NPOココペリ121長見代表挨拶)

長見:お越しいただいたみなさま、手話通訳の方々、スタッフのみなさん、司会のおふたり、本当にありがとうございました。

 

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『えんとこの歌』自主上映会のチラシはこちら

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2020年9月12日『えんとこの歌』自主上映会 @京都教育文化センター(前編)

伊勢監督・遠藤滋さん・鷲田先生によるアフター・トーク

 

NPOココペリ121では、2020年9月12日に京都教育文化センターにて、ドキュメンタリー映画『えんとこの歌〜寝たきり歌人・遠藤滋』自主上映会を行いました。

新型コロナウィルスの影響で一時は開催が危ぶまれましたが、みなさまのご協力のもと、なんとか上映にこぎつけることができました。

会場に足をお運びいただいたみなさま、誠にありがとうございました。

 

『えんとこの歌』の上映後、舞台よ伊勢真一監督が、東京の遠藤滋さんとZoom(ズーム)で繋がって、アフター・トークをしてくださいました。

そしてなんと、観客としてお見えになっていた鷲田清一先生にも舞台に上がっていただき、豪華な顔ぶれのトークとなりました。

そのトークの様子を以下、テキストにてお伝えします。(敬称略)

 

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ドキュメンタリー映画『えんとこの歌』上映終了後)

 

司会:みなさま、大変長い間のご着席おつかれさまです。この後は『えんとこの歌』を手掛けた伊勢監督とあの遠藤滋さんがZoomを通して、短い時間ではありますが、トークをしてくださる予定になっております。

すぐにといきたいところですが、ここでちょっと喜ばしいお知らせがあります。それというのも、この『えんとこの歌』が昨年、毎日映画コンクールにてドキュメンタリー映画賞を受賞されました。おめでとうございます。

 

(会場拍手)

 

司会:伊勢監督、舞台に上がっていただけますか?

 

(伊勢監督舞台に登場。会場拍手)

 

司会:この喜ばしいことを祝福して、花束が用意されております。花束を渡していただける関係者の方々、舞台にお願いします。

花束を渡していただく方々の中に、鷲田清一先生がいらっしゃってます。鷲田先生と伊勢監督が出会われて、今年で20年になるそうです。記念すべき今回の受賞を縁の深い鷲田先生にもお祝いしていただきます。どうぞ。

 

 (鷲田先生・水谷さん・濱村さん・子どもたちより、伊勢監督へ花束贈呈)

 

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伊勢:ありがとう。

 

鷲田:おめでとうございます。

 

(会場拍手)

 

司会:伊勢監督、本当におめでとうございます。

 

伊勢:ありがとうございます。キッズから花束もらったのは初めてだ(笑)。鷲田先生、「仏壇に供えるような花束ですけど」って言いながらくれたんだけど、うちに帰って仏壇に供えます。

 

司会:では準備も整ったようなので、次は遠藤さんに登場していただきましょう。

 

(スクリーンのZoom画面に、遠藤さん・えんとこメンバーが登場)

 

司会:右下に写ってらっしゃるのが、遠藤さん達です。

 

菅原:聞こえてますか?

 

司会:聞こえてまーす。では伊勢監督と鷲田先生、マイクのほうでトークよろしくお願いします。

 

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遠藤(日下部が口伝え。以下略):こんにちは。

 

伊勢:えっと、遠藤と、谷ぐちくんと、菅原くんと、日下部くんかな? そうだね。

 

えんとこメンバー:はい。

 

伊勢:この映画に出演していた介助のメンバーと、主演の遠藤滋です。鷲田先生、

 

鷲田:こんにちは。

 

遠藤:こんにちは。

 

谷ぐち:マイク聞こえてますか?

 

鷲田:はい、よく聞こえてます。遠藤さんには僕、一方的に5、60回会ってる(笑)。うん。でも、はじめまして。

 

伊勢:あの、20年前の『えんとこ』のときに鷲田さんが映画を観てくれて、大感動して、それで、それから僕と鷲田さんの付き合いが始まったっていう。それから今日のこの映画会を主催してくれた長見くんっていうココペリのリーダーも、その20年前の『えんとこ』を観て、とても共感して今の活動を始めるようになったっていうふうに聞いてます。だから『えんとこ』は結構いろんな人にこう、強い影響を与えてる(笑)。今日、なんか「このことだけは言いたいっていうことがある」って言ってたのは、何ですか?

 

遠藤:えっと、こちらからというよりは逆に、見ていて、あの、ちょっと質問したいことがあるんですが、

 

伊勢:難しいことは駄目だよ。

 

遠藤:うん。よろしいでしょうか?

 

伊勢:いいよ。

 

遠藤:えっと、まず今回の映画で、要所要所に僕自身の短歌を、あの、入れたのは、どうしてなんでしょうか? まずそれです。

 

伊勢:あ、映画の中に短歌を入れたこと? それはもう、遠藤の短歌を初めて読んだというか聞いたのは、たぶん5、6年前だと思うんだよね、そんなに昔じゃなくて。前の『えんとこ』のときには、遠藤も短歌やってるってわけじゃなかったから。で、なんか僕が映画を作るように、遠藤も短歌を作るっていうことを、なんかきっと同じような気持ちでやってるんだろうなって、とても思った。

なんかそれと、若い介助の周りのメンバーとすごく、短歌を作るってことを通じてね、むしろその僕が感じたのは、見事にこう解り合ってるっていうよりも、見事にすれ違ってるっていう感じが、とってもいいなあっていうふうに思ったの。それこそあの、谷ぐちくんが言ってる「寄り合う」って、もしかしたらそういうことじゃないかな?っていうか。なんか「一緒に仲良くやってます」とか、「よーくわかってます」とかいうんじゃなくて、それをこう一つ一つすれ違いながら、でもすぐそばで、すぐそばで、こう耳元で口元で、お互いがこう繋がっているっていうのが、とっても僕は感動したっていうか。「あ、これは短歌が遠藤のことや遠藤と、そのみんな、介助のみんなのことを伝えるだろな」っていうふうに思ったから。これは、かなりほんとにそう、真面目にそう思ってます。

 

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遠藤は、大学で2年先輩なんですね。日文科。もう完全な文学青年。で、とても文語的な文学青年、の今もですね。で、片や後ろに立っている連中は文語的なタイプではまったくなくて、口語的なお兄ちゃんたち。文語は全然ぴんとこない。でも、遠藤も口語は全然ぴんとこないかもしれないっていうことを含めて、こんな風にこうぶつかりながらこう繋がるんだっていうのに、とってもこう共感した。うん。
鷲田先生、今日ちょっと感想とか、

 

鷲田:いや、遠藤さんってこう、とことん教師なんだなって思います。学校に行けなくても、寝たきりであっても、みんなにいろんなことをしてもらっても、それでも教師を続ける、人を支える、背中を押す、そういう仕事をずーっとやってこられたんだなって思ってきました。

昔、20年以上前ですが最初に映画観たときに、えんとこのスタッフの連絡帳っていうのを見せてもらったことがあるんだけど、そのときに正反対の感想が。連絡帳っていっても連絡事項だけじゃなしにだんだん、遠藤さんへの想いとかむかついたこととか、みんな好き放題書くんですが(笑)、その中に二つ正反対の感想があって。一人は遠藤さんにこう、「他の人に言ったらこう軽く取られる、馬鹿にされるようなことでも、遠藤さんはひと言ひと言、言葉を待って聞いてくれた。言葉を聞いてもらえて嬉しかった」っていう感想が一方にあって。その正反対に、ものすごい印象に残ってるんですけど、遠藤さんに向かって、「あなたに言語障害があってよかった」って言って。で、「えっ」て思ったんですけど、「なぜなら遠藤さんの言葉を一つ一つ聞き漏らすまいと、今もそうですけども、必死で聞くことができた」。つまり前の人は、「聞いてもらって嬉しかった」。もう一人の人は、「聞く、自分もそうして人の話を聞ける、必死で関心持って聞けるんだって、そのことが嬉しかった」っていう正反対の感想が書いてあって。つまり、「聞いてもらいたい」っていう、「自分を支えてほしい」っていう人がそのまま遠藤さんのところにいる、入るってことは、人の話を聞く側に、必死で聞く側にひっくりかえってしまう、反転してしまう。ってことが、まさにここの学校の一番すごいところだなって思いました。

 

伊勢:ちょうどって、ちょうど鷲田さんが『「聴く」ことの力』を書かれて発表されたちょっと後ぐらいにだったんですよね。で『「聴く」ことの力』って僕も読んで感動して、鷲田さんところに手紙を書いたんです、ラブレターみたいに(笑)。で、今日は始まる前に言ってたんですが、新しい本の、えっと、素肌の…、

 

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鷲田:違う違う、素肌じゃない、素手

 

伊勢:『素手のふるまい』。素肌のじゃない(笑)、『素手のふるまい』っていう、鷲田さんの新しい、とってもいい本です。文庫本で、今度出てる本が、「なんか今の状況、今の時代に向けて書かれたみたいだね」って話をしたんですけれども。

僕も『えんとこの歌』ができたのが実は去年なんだけども、この映画を観るっていう、観てもらうっていう意味で言うとね、ほんとに今の状況に、今の状況でこの映画を観るっていうことがとっても、なんかこう、「ああ、そういうことをもしかしたら見越していたんじゃないか?」っていうぐらい、「これを作った監督は」、そんなこと全然ないんだけど(笑)。でも今本当に誰もが、ある意味ではその、まあ傷ついてというか、誰もがいろんなことをこう考えないわけにはいかないという状況の中でね、それこそさっき言った「寄り添う」んじゃなくて「寄り合う」ってどういうことなんだろう?
っていうようなことを、もっとこうなんか今、なんかこうみんなに考えてもらうっていうことのためにこの映画が生まれたんじゃないかって、ちょっとね、ここんところこの映画を観ると、自分の映画ながらなかなかいい映画だなって思うんですけども(笑)。で、なんか、もしかしたら映画とか本とか音楽ってそうやってその次の時間っていうか、これから生きていく時間をやっぱりみんなにメッセージしてるっていうことなのかもしれないですよね、いい作品はね。

パンクロッカーの谷ぐち君のあの歌、なんていう歌だっけ? 映画の中で歌ってるの。

 

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谷ぐち:『共生社会を実現させる歌』です。

 

伊勢:(笑)あれもたぶん、これからを歌ってるんだよね?

 

司会:そろそろお時間が近づいて来ているので、最後に遠藤さん達に『不屈の民』の歌を歌っていただけるというふうに聞いているのですが、準備のほうよろしいでしょうか?

 

谷ぐち:はーい。

 

司会:それではよろしくお願いします。

 

(遠藤さん、えんとこメンバーによる『不屈の民』合唱)

 

谷ぐち:ありがとうございましたー。

 

司会:遠藤さんたち、ありがとうございましたー。

 

(会場拍手)

 

司会:さて、遠藤さんたちとのお時間も短く惜しまれるとこなんですが、次のほうに移りたいと思います。伊勢監督と鷲田先生も、どうもよい時間をよいお話ありがとうございました。

 

伊勢・鷲田:ありがとうございました。

 

(会場拍手)

 

 

演奏『不屈の民』&『えんとこぶし』 by NAI!

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El pueblo unido,jamás será vencido.

...

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ハンガリー語入門講座

 

P.E.:みなさまこんにちは。ご紹介に預かりました、ハンガリー出身のP.E.と申します。どうぞ宜しくお願いいたします。

 (会場拍手)

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P.E.:ちょうど8月の半ばから、ココペリに入りまして、最近ハンガリー語勉強会を担当させていただいております。

で、少しだけ自分について話しますと、実は私はもう10年間ずっと海外に住んでおりまして、でその一つの大きな理由はもともと子供の頃から、言語や文化、まあ異文化に興味がありまして。で特にイギリスと日本にあこがれて、この二つの国に一応住んだこともあります。

でも長年海外に居続けて、いろんな素敵な方たちと、現地の人たちと交流しながら生活を楽しんでても、一つ物足りないことがあるとずっと思ってて。それはハンガリー人としての自分と、自分が知ってるそういう、そこの現地の人たちに知らない世界をなかなか分かち合うことが出来ない、共有することが出来なくて、そういうところが寂しくて。

ちょうどこの夏に転職しようと思って、インターネットで、ちょっとしたアイデアだけだったんですけれども、ハンガリー語や、ハンガリーの文化に関する仕事ないかな?っていうふうに関西圏で色々検索してみてもなかなか何も出てこず、で、全く別件でココペリに行ってみましたら、その場で「ハンガリー語を教えてくれませんか」っていうお願いをされまして。人生面白いなと思いまして、すぐ引き受けたいと思いました。

と言う訳で、今この場にいます。で、最近ハンガリー語をココペリのみなさまに教えてるんですけれども、11月から、詳細があとで決まるんですけれども、11月から一般市民向けの講座(注1)も設けたいと思います。えー、蹴上のところの京都市国際交流会館でやる予定ですので、文化、言語、それとも人っていうものに興味のある方々はぜひぜひお越しください。お待ちしております。

 

 (会場拍手)

 

(注1)新型コロナウイルス感染拡大のため、当初2020年11月を予定していた講座は、2021年3月に開催することとなりました。3月20日、4月3日のプレイベントと4月17日以降の講座スケジュールは以下です。

drive.google.com

 公式ホームページ:https://kokopellimagyar.wixsite.com/-site

 

P.E.:で、ずっとハンガリー語の話をしているのに、一言もハンガリー語で言ってないっていう状況なんですけれども、ちょっとそれは、私ではなくほんとについ最近ハンガリー語を勉強し始めたココペリのみなさまにちょっとお任せしたいと思います。

と言う訳で、本日はちょっと芝居というか、出し物を二つやります。一つ目は、一応こういう場で行われてるものです。みなさまに、ちょっとココペリのハンガリー語を勉強してるみなさまに、一つチャレンジ与えて、新聞を買ってもらいたいと。で、うまく買うことが出来るかどうかは、ぜひぜひお楽しみにご覧くださいませ。

 

(会場拍手、ハンガリー語生徒登場)

 

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星子:Jó napot!

八木:Jó napot!

星子:Kérek egy hírlapot.(お金差し出す)

八木:Hírapot? Elfogyott.(手に持っていた新聞を放り投げる)

星子:Elfogyott? Jó napot!(怒って帰る)

八木:Jó napot!

 

(次の生徒登場)

 

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尾川:Jó napot!

伊藤:Jó napot!

尾川:Kérek egy hírlapot.

伊藤:Hírapot? Elfogyott.(手に持っている新聞を隠す)

尾川:(笑)Elfogyott? Jó napot!(新聞持ってたのに、という感情)

伊藤:Jó napot!

(会場拍手)

 

P.E.:ちょっと上手くいきませんでした。

 

(会場笑い)

 

P.E.:では、二つ目の芝居に入りたいと思います。

これはÖrkény István(注2)という、とても有名なハンガリー人の作家の『一分間短編』ていう、短編小説のコレクションからの一つです。ま、詩には見えるんですけれども、小説って言います。で、次はこれを出演していただきたいなと思います。では宜しくお願い致します。

では、お楽しみください。Örkény István『Változatok(注3)』。

 

(注2)Örkény István(ウォルケーニュ・イシュトヴァーン)、1912-1979、代表作『一分間短編』。

(注3)『Változatok』、和訳『バリエーション』。

 

P.E.とハンガリー語生徒:

(会場の後ろ向きにハンガリー語の語句カードを挙げながら)

 A fűre lépni tilos

 tilos a fűre lépni

 lépni tilos lépni

 lépni lépni lépni

 lépni tilos tilos

 tilos tilos tilos.

 (振り返って)Tilos.

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P.E.:では、ありがとうございます。

 

(会場拍手)

 

司会:ありがとうございました。

次回、宮澤賢治『ひかりの素足』を読みます

昨晩も寒い中ケア塾茶山にお越しいただき、ありがとうございました。

宮澤賢治『農民芸術概論綱要』と『農民芸術の興隆』を読み、

みなさまと感想などをシェアできて、とても味わい深いひと時でした。

 

西川勝さん曰く、

「賢治は僕らにどんなふうに読んでほしいんかな?って考えたら、

 ただ単に知識を取り入れてわかった気になるんじゃなくて、

 読んでお互いに考えを話し合って、

 読むうちにわからんことがどんどん増えていくような、

 そんな読み方がええんやろうなって思います」。

 

わからないことを調べてすぐにわかった気になるのではなく、

わからないという状態を持ちこたえて吟味しつづけていくこと。

特に現代のように情報が溢れている社会においては、それはとても大事なことだと感じます。

 

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今回『農民芸術概論綱要』は読み終えなかったのですが、

次回はいったん別の作品を読んで『農民芸術概論綱要』の続きも読みましょう、ということになりました。

 

そこで、3月9日(火) 第43回ケア塾茶山では

宮澤賢治ひかりの素足』と『農民芸術概論綱要』を読む予定です。

 

 全文は青空文庫にてご覧いただけます。

ひかりの素足

https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/458_19935.html

『農民芸術概論綱要』

https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/2386_13825.html

『農民芸術の興隆』

https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/45631_23910.html

 

みなさまのお越しをお待ちしております。

もんでんさんの作業机

昨年11月にこのブログでご紹介したもんでん奈津代さん、『マグノリアの木』『インドラの網』の英訳をひと通り終えられ、今はネイティブ・チェックの担当者とやり取りをしているところだそうです。

 

翻訳作業を進めておられるもんでんさんの作業机がとても美しいと思い、写真を撮らせてもらいました。

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開いたノートの頁には、賢治の作品に出てくる様々な鉱石の名前とその説明が書かれています。別のページには、仏教に関する学びが散りばめられていました。

研究書を読み、賢治の他作品の英訳を参照し、時には鉱石を手に取って観察したりもしながら、賢治の世界に浸って翻訳を進めているとのこと。

そんな様子がありありと伺える、もんでんさんの机でした。

節分

今年の節分は124年ぶりに2月2日になるのだと、スーパーのアナウンスが繰り返し語っていました。

立春の前日であるこの節分に、豆を撒く、鰯の頭を柊に刺して門口に飾るというこれまでの厄払いの儀式に加え、近年では太巻きを食べるのもすっかりポピュラーになってきましたね。

 

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食べ物と行事を結び付けるアイデアは、昔からいろいろと考えられては流行してきたのでしょう。

みなさまが健やかに過ごせますようにと、いただいた豆を食べながら願います。

 

次回、宮澤賢治『農民芸術概論』の続きを読みます

2021年最初のケア塾茶山にお越しくださったみなさま、ありがとうございました。

西川勝さんの手引きのもと、宮澤賢治『農民芸術概論』『農民芸術概論綱要』を読み、途中、『農民芸術の興隆』も参照しました。

 

西川さん曰く、「僕はこの『農民芸術概論綱要』がココペリ121の綱要でもいいと思ってるねん」とのこと。

科学と宗教と生活とが一致するようなあり方、賢治の言う「まことの幸福」とは、どういったことなのでしょうか。

 

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2月9日(火)、第42回ケア塾茶山は引き続き、宮澤賢治『農民芸術概論』『農民芸術概論綱要』『農民芸術の興隆』を読みます。途中からのご参加も歓迎です。

 

 全文は青空文庫にてご覧いただけます。

『農民芸術概論』

 https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/465_13824.html

『農民芸術概論綱要』

https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/2386_13825.html

『農民芸術の興隆』

https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/45631_23910.html