ケア塾茶山 祝開塾一周年!

進行役をお務めの西川勝先生からコメントを寄せていただきました!

心にしみる温かいお言葉、ありがとうございました!

 

 もう、一年になるんですね。ぼくは大阪府南部から電車を乗り継いで、京都は叡山電車茶山駅まで約二時間。毎月第2水曜日に開かれる「ケア塾茶山」に通いました。サン=テグジュペリ著、稲垣直樹訳、『星の王子さま』(平凡社)の読書会で進行役を務めるためです。この読書会の主催はNPOココペリ121で、その代表である長見有人さんは、ぼくの古い友人です。今までにも、一緒にいくつかの学習会を企画して実施したことがあります。自由律俳句の尾崎放哉について人前で初めて話をしたときも、長見さんが力になってくれました。当時は予想もしませんでしたが、後にぼくは尾崎放哉に関する本を書き、自由律俳句の結社で活動をするようになりました。ぼくが本当に気になっていることや大切だと思うことだけをテーマにして、ともに考えてくれる人が長見さんなのです。彼は代表としてNPOココペリ121のスタッフに仕事と給料だけを割り振るのではなく、仕事を通じて考えるべき哲学への誘いを忘れません。ぼくが担当する学習会には、いつもスタッフの皆さんが参加して議論を盛り上げてくれます。なかには知り合いの方を誘って参加してくれるスタッフもいます。実に、ありがたいことです。
 さて、読書会で扱っている『星の王子さま』は文庫サイズで約180ページの小さな本です。2018年8月で12回の読書会があったのですが、ようやく73ページにたどり着きました。一回2時間あまりをかけているのですから、そのスローペースは想像できるでしょう。進行役のぼくが音読をして、自分なりの考えを話して参加者に意見を求めるというスタイルです。特別に難しい用語や論理が駆使されている訳ではない『星の王子さま』ですが、素直に読み込んでいこうと思うと、謎に満ちた本に様変わりします。実は書かれていないところにこそ、この本のメッセージが潜んでいるのです。それをなんとかして、みんなで探し出そうとするのが、とても楽しい時間になります。
 実は、ぼくが『星の王子さま』を題材にして話をするのは今回が初めてではありません。大阪阿倍野でのケア塾たまてばこ、京都府舞鶴市特別養護老人ホーム「グレイスヴィルまいづる」でのとつとつ勉強会、大谷大学の人間学の授業など、いずれも半年から一年をかけてじっくり講義するものでした。ケア塾茶山での、ぼくの話にはそれらの経験が加えられています。ただ、今回は事前に原文のフランス語を筆写してから、読書会に臨むことにしています。残念ながら、今のぼくにはフランス語を読み解く能力はありません。でも、わからないままにでも筆写する時間は、ぼくに何かを与えてくれている気がします。
 王子が自分の星を離れて、旅の後に地球にたどり着き、ちょうど一年を地球で過ごします。王子が地球で過ごした一年を、ケア塾茶山も経過しました。読書会は、まだ小惑星の旅の途中なので、この本の最後のページをめくるには、あと一年はかかるでしょう。一冊の本を、それも片手に収まるほどの小さな本を、これだけの時間をかけて読むというのは滅多にないことだと思います。『星の王子さま』と「なじみになる」ためには大切な時間だとおもいます。経巡る季節を感じながら、みなさんと読み続けたいと願っています。

 

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